まずはエヴァを語る上で避けて通れない謎の「インパクト」という「事象」について考察したいと思う。
私の考察を結論から言うと、この事象の発生要素は「漫画版/TV版」と「新劇場版」で異なるので、まずは「漫画版/TV版」から考察する。

「インパクト」とは、神に等しい存在にロンギヌスの槍を刺す事により、神が生まれる前の姿に戻ろうとする事で発生する事象を「インパクト」と呼ぶ。
というのが私の出した事象に対する結論だ。
人類が滅ぶなどというのはこの事象が発生した結果でしかない為、大して重要な情報ではない。

この考察の根拠はTV版のDVD第弐拾壱話(21話)にDVD版として収録された国連の記録映像が根拠となっている。
※セリフ全文は別ファイル参照の事
この記録映像はセカンドインパクト発生当時、南極のアダムに対して何が行われていたかを記録した映像(正しくは音声)だ。
最重要部分のみここでは抜粋する。

————-ここから抜粋————-
声(左)「アダムにダイブした遺伝子は、既に物理的融合を果たしています」
声(左)「ATフィールドが、全て解放されていきます!」
(C.308)光る風景。外、ドーム状。手すりのような、意味のなさそうなところを撮っているカメラ。揺れてノイズあり。
声(右)「槍だ!槍を引き戻せっ!」
声(左)「だめだ、磁場が保てない!」
声(右)「沈んでいくぞ!」
(C.309)暴風。鋼材に引っかかってなびく手袋、切れたケーブルなど。揺れるカメラ、ノイズあり
声(左)「わずかでもいい、被害を最小限に食い止めろっ!」
声(右)「構成原子のクォーク単位での分解だ!急げ!」
カメラが倒れ、地面が映る
声(左)「ガフの扉が開くと同時に、熱減却処理を開始!」
声(右)「すごい…歩きはじめた…」
声(左)「地上からも、歩行を確認!」
声(中央)「コンマ1秒でもいい、奴自身にアンチATフィールドに干渉可能な、エネルギーを絞り出させるんだ」
声(左)「すでに変換システムがセットされています!」
声(左)「カウントダウン、進行中!」
声(右)「S2機関と起爆装置がリンクされています。解除不能!」
声(右)「ハネを広げている!地上に出るぞ!」
————-ここまで抜粋————-

ここから推測できる事は
声(左)「アダムにダイブした遺伝子は、既に物理的融合を果たしています」
というセリフから、アダムに対し人の遺伝子を注入し、アダムを操ろうという実験をしていたという事だ。
その根拠は以下のリツコのセリフから推測できる。

23話リツコ「ヒトは、神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だからバチがあたった。それが15年前。せっかく拾った神様も消えてしまったわ」

「手に入れようとした」とはつまり、意のままに操ろうとしたと解釈するのが自然だろう。
では神様とは何を指すのか?

エヴァの世界では旧約聖書が事実であったとする設定で描かれている。
旧約聖書における神に等しき存在とは「知恵の実」と「生命の樹」の両方を得た存在が神に等しき存在と書かれている。
旧約聖書では人は神の言いつけを破り、知恵の実(リンゴ)を口にしたアダムとイブの末裔とされている。
対して使徒(天使)は知恵の実を手に入れた人類が、生命の樹を手に入れられないように、神が生命の樹を守る為に、生命の樹から作り出した存在とされている。
エヴァの世界でも人類は知恵の実を取り込んだ存在で、使途は生命の樹から生まれた存在という設定になっている。
つまり、使徒であるアダムに人の遺伝子を融合させれば知恵の実と生命の樹の両方を手に入れた存在。神に等しき存在になるという解釈だ。

この根拠はエヴァ零号機を初めて見た冬月の以下のセリフからも推測できる。

21話冬月「神のプロトタイプか」

ただ、恐らく南極の科学者たちはその事実を知らなかったと思われる。
根拠は同21話の以下の映像(音声)だ。

————-ここから抜粋————-
キール「科学者というのは、どうも自分の考えを信じすぎるからね」
碇「独善的ですか」
キール「思い込みが激しすぎるんだよ。現実を的確に把握できん連中だからな」
碇「そういう人種が真実を求めている。皮肉なものです」
キール「彼らはそんな、崇高なものではない。発見は喜びであり、理解は支配に繋がる。求めているのは、自分の気持ちよさだけだ」
————-ここまで抜粋————-

このセリフから南極の科学者たちが状況を正確に把握できていなかった事が推測される。
恐らく科学者たちはアダムを意のままに操る為に人遺伝子を注入し、結果として神に等しき存在を作り上げてしまったものと私は推測している。
そして恐らくアダムに人遺伝子を注入する為に、アダムのATフィールドを突破する必要があった。
その為にATフィールドを破る効果を持つロンギヌスの槍をアダムに刺し、ATフィールドを突破して人遺伝子を注入したのだろう。
それが下記セリフに繋がっている。

声(右)「槍だ!槍を引き戻せっ!」

では何故神に等しき存在にロンギヌスの槍を刺すと神が生まれる前の姿に戻ろうとするのか?
この作品ではATフィールドは生(ビルドー)の象徴として描かれており、ロンギヌスの槍は死(デストルドー)の象徴として描かれている。
作品中でインパクトの際「デストルドー反応増大」などというセリフが出てくるのはこの為だ。
それが「生まれる前の姿に戻る」とどう関係するのかというと、端的に言ってしまえば「神は死なない」という事だ。
本来であればデストルドーの象徴であるロンギヌスの槍に貫かれれば生命体は物理的ダメージではなく、死へ向かう自身の感情により生の象徴であるATフィールドを失って死滅する。
だが、神は死なない。その神がロンギヌスの槍に貫かれた時、死へ向かう自身の感情に支配されるも死ねない為に自身を生まれる前の姿に戻そうとする。という事だ。
その際、自身のATフィールドを自ら消す為に膨大な神の力で自身のATフィールドをアンチATフィールドへと転化させる。
ただ、そのアンチATフィールドの力が強すぎて地球全体を覆ってしまうほどの範囲で広がる結果、全人類がATフィールドを失って死滅するという事だ。

では上記セリフに出てくるガフの扉とは何か?

声(左)「ガフの扉が開くと同時に、熱減却処理を開始!」

これはAirや新劇でも度々登場する言葉だが、元はユダヤ教に由来する。
ユダヤ教では魂が生まれる場所をガフの部屋と呼んでいる。そのガフの部屋に繋がる扉という事で作中ではガフの扉と呼ばれている。
つまり神は生まれる前の姿に戻る=魂が生まれる前に還る。その為にガフの扉を開け、ガフの部屋に戻ろうという事だ。
となるともう1つ疑問が生まれる。何故ガフの部屋を熱滅却処理する必要があったのか?

先にも述べた通り、人と使途は別の起源を持つ生命体だ。つまり魂の起源も異なる。作中ではそれぞれの起源を白き月(使徒の起源)と黒き月(人の起源)と例えられている。
ここで開こうとしているガフの扉は使徒のガフの扉(アダムは使徒だから)だ。使徒のガフの扉が開いてしまえばそこから使徒の魂が生まれ、いずれ人類は使徒に滅ぼされてしまう。
まあ、インパクトにより全人類が滅んでしまえばそんなことも言っていられないわけだが、仮に人類がインパクトを生き残れたとしてもその後使途に滅ぼされてしまうという事だ。
その為、科学者たちは使徒のガフの部屋を熱滅却処理して使徒の魂が生まれないようにしたという訳だ。
そして開かれた使徒のガフの部屋はあくまで使徒の魂の部屋なので人の魂がそこへ還る事は出来ない。
なので使徒のガフの部屋が開かれている状態で人のATフィールドが消滅した場合、その魂はガフの部屋に還るのではなく、単に消滅するだけだ。

ではそんなインパクトがどうして途中で止まったか?それは下記セリフで描かれている。

声(右)「S2機関と起爆装置がリンクされています。解除不能!」

S2機関とは使徒の内燃機関であり、使徒の原動力だ。これを理論化したのものが葛城博士(ミサトの父)が提唱したスーパーソレノイド理論である。
恐らくS2機関という名称はこのスーパーソレノイド理論から取った名称だろう。

————-ここから余談————-

尚、現在でもソレノイド理論というものはあり、端的に言ってしまうと磁場を利用して非接触状態で電力を供給する理論だ。
詳しくはググって欲しい。
ちなみに、現在のQiという非接触充電はこの理論を元に開発されたものらしい。

————-ここまで余談————-

このS2機関に爆薬が仕込まれており、それが爆発して内燃機関を失ったアダムが停止(というより粉々に吹き飛ばされた。この時点でアダムにはATフィールドが無いからね!)する事で
セカンドインパクトは止まった。
勿論この爆薬を仕込んでいたのも、起爆装置を仕掛けたのもゼーレである事は疑う余地もない。
何故ならゼーレはこうなる(セカンドインパクトの発生)事を予見しており、ここで全人類が滅んでしまう事を望んでいないからである。
ではゼーレの目的とは何であったのか?それは後述する「人類補完計画」で考察する。

By Michy